休眠預金助成事業(退所者フォローアップ支援事業④)

社交する、退所した人、在所している人、
そして職員、ボランティア。舞台はウィズ広島。

贈与、社交するコミュニケーション

 「もうし、もうし!」。電話の向こうのすずめさんです。「忙しいですか?」「うん、忙しいよ」「行っていいですか?これからブックオフによって行きます」。ウィズ広島を退所して10年余りのすずめさん。うなずくほかに言葉はありません。そのエピソードをもういちどご紹介します。
 間もなくするとやってきました。「はい」と大きないちごを差し出します。「ありがとう」「私の行くところは、病院とウィズと買い物のフジタランだけです。それと月に一度、入院中知り合った友だちのところに長電話するだけ」。こうしてすずめさんと私の近況が交換されます。
 そのうち、座っている後ろのテーブルで大きな声がします。くうちゃんです。普通の声でもききにくくなりました。「2か月ばかり入院していたんです。そう声かけられてすずめさんとの話が途切れます。私はすずめさんと2度3度、顔を見合わせていましたが、「きょうは帰るか?次のカフェはみんなも待ってるよ」。味噌煮缶、ポン酢などを手渡して見送ります。そのときの贈与、社交、支援する関係をキーワードに次のような図表にしました。うん、小さいながらもウィズ広島は、社会だ。それまではあまり意識していなかったことです。

 すずめさんが帰った後のことをつづけます。退院したくうさんは、NPOの女性の介助でリハビリ用の杖を持参しました。使わないのでがーさん(86歳)に持ってきた」。こうしてがーさんが3階から降りてきてリハビリ用の杖を手に練習します。私もかけ声よろしく、「足より杖を前に。はい、行くよ。い~ち、に~い、い~ち、に~い」。がーさんに笑顔が浮かびます。うれしい、愉しい時間です。

両杖をつくがーさんと外用薬.jpg

 NPOの女性とうれしそうに帰るくうさんに手渡される、ロスフードの品々。ついでに、分かち合い社交するコミュニケーション支援。ここでもシェアリング・ロスフードの出番です。そしてまた、くうさんがいらなくなったリハビリ用の杖を、がーさんに贈り社交し、がーさんを支援する。
 これには、おまけのエピソードがあります。その翌々日のこと。くろさんが、「はい、持ってきた。ここは人が多いけぇ。いっぱいいるだろ」と封の切っていない経皮鎮痛消炎剤外用薬7枚入り1つを事務室のオープンカウンターの上に置きました。帰りは貴重なロスフードの出番です。できることを、行くついでに贈って社交する、丸くつながる現実を見ます。退所者フォローアップ支援なんて、あれこれむずかしく考えることないんですね。

すばらしき世界.jpg

 きょう、「すばらしき世界」という映画を見て帰りました。一昨日、専門員のたーさんが私の執務室にきて、「いいですか?」といきなり問います。「いいよ」。「よかったですよ。旭川刑務所を出て、いろんな人に助けられながら波乱の人生を送る、男の物語です。さいごが少し残念でしたけどね」、専門員のたーさんは、しきりに残念を繰り返します。母は、邪魔だから児童養護施設に預けたのではない、それが証拠に行事のたびに面会にきてくれた。そう思いながらも口には出せない、確認できない母親への怒り。その欲動が執拗な攻撃になって表出する悲劇。これをかつての弁護士夫婦、テレビ番組のディレクター、少しわけありスーパーマーケットの主人などたくさんの人々に囲まれて新生の夜明けを見ようとしたが――。

 見終わって思い出すのが、いろんな障害をもつ人の施設、北海道浦河町べてるの家のことです。近くの医師の川村敏明さんは、「厚みのある援助」といいます。「ひとり二人だったらね。とても不安なんです。どっさり人がいるんです。ふふふ。質より量です」。すると、「応援ミーティング」隊の保健師さんから声が上がります。「私たち、質より量ですか」「そうです。しっかりしていない人たちがいっぱいいるところに、ちょっとしっかりがぽっん、ぽっんと入ってる。すると温かみが出てくるんです」(鷲田清一『つかふ―使用論ノート』小学館刊から引用)。
 

データは/語る、

退所者フォローアップ支援

# ここらで、ウィズ広島6か月間の退所した人を囲む、予備面接や来所相談、通所処遇、訪問支援、電話での安否、手紙の往信、心理相談、カフェ、8つの視点に立ち、これに支援員と補導職員、ボランティア、ピアサポーターがどれだけ「厚みのある援助」をしたかを読み解きます。

 

# 支援員、補導職員が共に多く関わっているのは、来所相談と電話での安否、カフェです。そのうち、支援員が対応した「来所相談」は465人(66%)です。補導職員の対応は159人(26.5%)でした。支援員が「電話で安否」照会したのは197人、76%でした。補導職員の電話安否は63人(24%)。「予備面接」はわずか3人(1%)です。支援員が215人(99%)。その約半数が在所者にごみの整理などをお願いしたボランティアワークが縁で予備面接につないでいる側面があります。予備面接を活性化させる大事なポイントですね。


# 「心理相談」は「傾聴支援」が活動の本質に近いですね。いずれにしてもこの活動は、利用者や退所した人を支援員がつなぎ、6か月間を振り返ると成果を上げ、外部カウンセラーの活動が活発になりました。それが傾聴へと広がるとき、内部カウンセラーを含めてカウンセリング活動が来所相談に深みをもち、心理相談に移行するのだと思います。

# 今回のデータは、「来所相談」、「電話安否」のいずれもが延べ人数です。厚みのある支援という視点から見ると、実数として一人でも多くの補導職員が関わっていることが望まれます。

# また、「来所相談」した人の約半数が「カフェ」に参加しています。聞き取り調査をしていないのでわかりませんが、顔ぶれや参加人数等から見て来所相談➡カフェ参加。カフェ参加、来所相談、いずれも単独で対流しています。偏ることのない支援。厚みのある支援をめざしたいと思います。これからも来所したついでに(わざわざでなく)、贈与し、対流する支援関係などまだまだ学ぶものがたくさんあります。

                             2021.2.16  Gya
 

贈与、社交するコミュニケーション②.jpg