休眠預金助成事業(退所者フォローアップ支援事業⑤)

受け入れがたい現実

 コロナ時代が長引き、人々の間に鬱屈した気持ちが漂っています。そのようななか、1人の利用者が死にました。前にも紹介した、がーさん(86歳)です。

 6月7日早朝、緊急搬送先の病院で誤嚥性肺炎のため急死しました。あれほど故郷に帰ることを夢見ていたのに、私たちの力が足らず、果たすことができませんでした。直葬にして遺骨を持ち帰り、在所している人、退所している人が本館1階の交流ルームでお別れ会をしました。皆からたくさんの香典やお供えが寄せられ、友人代表としてかつて同じ刑務所で一緒だった退所者が最後に別れのあいさつをして締めくくりました。
 世の中は、今、コロナ禍に気持ちを奪われ、人と会わない、共に食べない日常がありますが、お別れ会では、人が顔と顔を合わせてがーさんの思い出を物語るのでした。

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 お別れ会に参列した人は、がーさんとの交流を思い出として記憶し、何かのはずみで思い出し、消えることはないでしょう。コロナ自粛という現実にややもすれば消滅しがちな現実ですが、思い出として記憶し、折に触れて物語ることがあれば、小さな島の秘密警察の記憶狩りに遭ったように降る雪のなかに消滅することはないでしょう。(『密やかな結晶』、小川洋子、講談社文庫1998年)。


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 今、ウィズ広島は、退所した人の孤独に手を差し延べようとしています。今年10月には、訪問等支援を実施します。がーさんのように少しでも希望の途上で死のために断念することがないようにしたいと思います。梅雨空のもとに小さな睡蓮の花びらが凛として開いています。

データは/語る、

退所者フォローアップ支援

# ここらで、ウィズ広島2021年1月から6月までに退所した人のフォローアップ支援の資料を読み解きます。

 

# 来所相談支援は、自然発生的に生まれたフォローアップ支援です。これは事業開始以来揺るぎません。それは、来所相談等が退所者の「私だけの」、自由な気分、自由な時間にゆだねられているからでしょう。支援員、補導職員共々、健闘しています。
これと同じくらい、支援員、補導職員が電話で安否確認した409人のうち、電話だけでは心配なのか、支援員が手紙等でフォローした人が12% 、51人でした。気になる人に3日に1回、元気? ○日はカフェよ、ロス食品を取りにおいでなどウィズ広島に来所相談等にくるように働きかけている現実があります。こうしたきめ細かいフォローアップ支援は、専従する支援員がいて成り立つようです。


# 在所者に働きかけるウォームアップ面接は、支援員が6か月間で102人、2日に1回、面接して退所後につなぐ働きかけをしています。補導職員に退所後を視野に入れた働きかけの余裕はないようです。

支援員が、在所者との間に信頼関係を築くのに在所者や来所相談等にきた退所者にウィズ広島独自のボランティアワークポイントを付けて換金化する制度を活用し、施設内外の清掃等を頼んでいるのが、効果を上げているように思います。

# カウンセリング支援は支援員が中に立ち、カウンセラーと在所者、退所者の都合を調整し、外部カウンセラー3人、5か月平均カウンセラーひとり42人と定着していますが、在所者が多く、退所した人とカウンセラーをどのようにつなぐかが、今後の課題です。
退所者や在所者含めて支援員のカウンセリングは、6か月合わせて379人、1か月平均の延べ人数は63人、そのうち支援拠点のウィズ広島に非常勤ながら勤務する利点を生かして支援員が順調にカウンセリング支援人数を延ばしています。

# ウィズ広島のカフェで支援は、退所者フォローアップ支援のメーン事業になりました。その1つが❶お茶カフェ。主要ボランティアがコロナ禍、高齢等で休まれたとき、後継ボランティアが引き受け参加者も退所者、在所者共に偏りなく実績を築いています。準備に苦労する支援員等職員がピアサポーターとよく連携しています。❷カフェシアターは日曜日、在所者の退屈しのぎからはじまりましたが、退所した人も参加した、均衡のとれたカフェになりつつあります。❸ロスカフェは、退所した人のカフェ。限定カフェですが、退所した人10人前後が、コロナ禍のなかのカフェでは食べる、飲むこともなく、例えばじゃんけん勝ち抜き大会などして勝った人順にほしいロス食品や開いた古着フリーマーケットからバッグなどそれぞれがほしいものをもらって帰ります。

いずれにしても人と人が交流するカフェはコロナ禍に翻弄されています。1月から6月までの間にお茶カフェ4回、その他のカフェ3回、中止しています。

# 先日、久々に1階交流ルームで在所者の卓球交流会がありました。冷房にしていたのでしょうに交流ルームから出てきた利用者は、みんなタオルで汗をぬぐいながら明るい笑顔でした。ひとりの職員の創意でしょうが、イイネ!!(^^)。 これがロスカフェとどのようにつながるのか、つながらないで独自の発展をするのか、衣食住の支援も大切ですが、「自分たちは忘れられていない」という心の栄養剤を在所者や退所者に提供したように思います。

# 今回報告では、退所者フォローアップ支援のスタッフ連絡会は6か月かで1回だけ。カフェが多様化すると関係するピアサポーター、スタッフ全員が集まって打ち合わせをすることが、困難になりました。個別の支援ごとにスタッフなどが集まりながら対話し、それをどのように集合するか、待ったなしの課題です。

# フォローアップ支援員は次のように感想をメモっています。
 ・ (退所者は)話をしに来るだけで落ち着く。
 ・    ウィズ広島の他に話をするところがない。
 ・    孤独な人が多い。
支援員のメモ
 ・    ハローワークには足が向かない。ついここ(ウィズ広島)にきてしまう。そして仕事につきたい退所者が、ここで(ウィズ広島)話を聞き、就労支援できないか? 
 ・    一人暮らしの人が多い退所者は、自分が死んだら…無縁佛はイヤだ、という退所者のつぶやきに就活について相談会などあればと思う(できればよい)。
 ・    死亡したときの生命保険の受取人がいないが、このまま国にとられたくない。仕事や家など保証人がいないため決まらない。決まっても(高齢、保証人がいないことで)ダメになる。

                             2021.7.16  Gya
 

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